新人発表会で精進賞を受賞した生徒さんの声

2015年4月18日に開催された岳智会「新人吟詠発表会」にて、精進賞を受賞された生徒さんのお声をここに掲載します。(岳智会会報誌「吟友」に掲載)


「私の富士山」     精進賞 Aさん 会社員 50代


 ♪ 民衆の酒、焼酎は安くてまわりが早い~高く上げ盃を~
そのあとで詩を吟ず~特級酒去らばされ~我らは詩吟を愛す

 この歌はもともとはドイツ民謡ですが「焼酎の唄」となって歌われておりました。替え歌ですから正解などないのですが、私の所属していたワンダーフォーゲル部はなぜか「詩を吟ず」になっており、山でお酒飲んで吟じたら気持ちいいんだろうなと思ってました。もちろん当時、詩吟をやる仲間もおらず歌も忘れてしまいました。

 そんな私が詩吟を知ったのは20代の頃アメリカに渡った時でした。当時、仕事先に詩吟をやっておられる方がおり、勧められるままにドイツ人と一緒に正座して練習しました。詩吟を習うより足のしびれに耐えるほうが大変で、今でも足の痛みだけは忘れません。

 私に詩吟を教えてくださったのはいわゆる戦争花嫁といわれている方だと思います。彼女たちは自分の幸せのため親を捨て日本を捨てた女、といった偏見を持たれがちな様です。「私たちは日本に帰りたくても堂々と帰れないのよ」とおっしゃってました。でも、彼女たちがアメリカの地で献身的に生き、信頼を築き上げているような気がして、むしろ日本人の心を伝承しているような気がしました。その方の吟は澄んでいてまるで思いが一瞬にして日本に届くようでした。

 私は日本に帰って数十年になりますが当時のことがとても大切なことに思えてまた詩吟を始める気になりました。

 今回発表した「富士山」は、最近日本百名山を完登したこともあり、是非吟じてみたい題目でした。富士山も3回ほど登頂したことがありますが、富士山は見かけによらずゴツゴツした荒々しい山です。時には雲が荒れ狂った龍のように見えることもあれば、湖面に美しい姿を映し出すやさしさと厳しさのエネルギーのかたまりです。また、作者の石川丈山は徳川の武士で大坂夏の陣に参加し一番に敵に乗り込むなど勇敢な面もありながら、造園家や文人でもあります。

「富士山」はわかりにくい詩だと言う人もいますが、実際丈山の建てた京都の詩仙堂に行って詩の内容を考えながら練習することはとても楽しいことでした。私はうまく吟ずることはできませんが、今まで山に登った情景や作者の気持ちを考え、エネルギーの詰まった自分の「富士山」を描きたかったのです。

 いままで何度か新人大会にも出させていただきましたがあまり良い思い出はありません。出だしで息を吸うのを忘れてしまい、苦しくて倒れそうになったこともあります。今回もどうせ失敗すると思って先生に言ったら、今の練習のように吟じたら私が精進賞をあげますと言われ、うれしくて舞い上がってしまいました。

 また、ひと月に一度、詩吟道場を開催していただき、新人や先輩たちと一緒に練習することも楽しいです。先輩達のお腹を見ているとシャツのボタンがとれそうなくらい動いており、これぞ腹式呼吸とよくわかります。詩吟はかくあるべきなどと言う人もいますが李白はお酒好きだったとか、やっぱり詩吟は楽しまないとね……。

 詩吟を始めると山だけではなくいろいろな景勝地も楽しむこともできるようになりました。上杉謙信の七尾城跡に行った時などは雷雨注意報の出る最悪のコンデションでしたが、「九月十三夜」(上杉謙信作)を練習している時だけは青空が出て陽がさしてました。終わったらまた雷やヒョウが降ってきましたが、まるで謙信がその間だけ静かに聞いていてくれてるようでした。

 受賞するにあたり、乙津理風先生はじめ多くの仲間に練習を付き合っていただき感謝しております。これからも賞に恥じないようこのすばらしい詩吟文化を大切にして、精進して参りたいと存じます。そしてまたいつか富士山に登って吟じてみたいです……。空気薄いから倒れるかな?



「精進賞受賞にあたり」
          精進賞 Mさん 事務職 30代


 この度、新人吟詠発表会に於いて精進賞を賜りましたこと、身に余る光栄に存じます。

 これもひとえに乙津理風先生の丁寧なご指導、そして教室の皆様の支えのお陰と、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。

 私が詩吟を始めたきっかけは、近所の図書館で偶然手にした一冊の本です。この本こそ、乙津先生のご著書『詩吟女子』でした。

 それまで詩吟の知識など殆どなかったのですが、本を読み進めてゆくうちに詩吟への興味がむくむくと湧いてきたと同時に、このような素晴らしい本を書き上げられた乙津先生の深い詩吟愛に居ても立ってもいられない程感動し、興奮冷めやらぬ状態ですぐさま体験レッスンの申し込みをさせて頂きました。

 程なくしてお会いできた乙津先生は、あたたかく優しい笑顔でこのような私を迎え入れて下さいました。

 ゼロからのスタート!初めてのお稽古は昨年の十二月でした。一回のお稽古は五十分。先生と一対一で向かい合い、全神経を集中させて臨みます。

 乙津先生に全幅の信頼を寄せているので、私は全てをさらけ出し、精一杯努力することができます。稽古場は、己の全精神をぶつける神聖な空間となり、あっという間に五十分が過ぎてしまいます。

 このように始めて間もない私ですが、先生の勧めに従い新人発表会の出吟を決心し、目標に向かって練習を積み重ねて参りました。

 発表会当日は、結婚式以来十年ぶりに着物を着て、不慣れな足取りで会場に向かいました。

 緊張で息苦しいのか、帯のせいで息苦しいのか、日常とはあまりにもかけ離れた状況で浮ついた心では、到底自己を見詰めることもできぬまま、あっという間に本番までも終えてしまった……。そんなちょっぴり苦い感覚の初めての新人発表会でした。

 それでもこのような評価を頂けたことを素直に享受し、私を導いて下さる先生方、教室の皆様に改めて感謝の意を表し、今後とも精進を積み重ねて参る所存でございます。


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