『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』と『大声のすすめ。』



■飲み込み力をアップさせ、誤嚥を防ぐには


最近、テレビ番組で取り上げられたりと話題になっているこちらの本。

のどを毎日使っている身として非常に興味深く読ませていただきました。

肺炎は肺炎でも、”誤嚥性肺炎”といって、気管に食べ物のカスが誤って入ってしまって、肺炎につながるというもの。それが原因で亡くなる方も多く、近年の死亡率では、ガン、心臓疾患に継いで三位にまで上るほどといいます。

誤嚥の原因はズバリ、のどの老化による、飲み込み力の低下。

誤嚥の専門医である著者は、数多くの誤嚥患者の治療や防止策を指導しながらも、もっと早く来てくれれば・・と語ります。

ところが、誤嚥による肺炎は、まったく症状がないまま、気づかないうちに進んでいることもあるのだそうです。
そして、「肺炎かも」と感じる状態になってからでは遅すぎるという・・。

対策はないものか・・。

ある!

それが「のどを鍛えなさい」ということなのです。

日頃からのどを鍛えれば、飲み込み力をアップさせ、誤嚥を防ぐことができる。

その誤嚥予防(至は肺炎予防)策を多数掲載しているのが、『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』という本です。


■しっかり飲み込み、しっかり呼吸して、しっかり声を出す


本書で紹介している誤嚥予防で最も大切なことの一つは、

しっかり飲み込み、しっかり呼吸して、しっかり声を出すという習慣をつけていくことです。

それが、のどの健康コンディションをキープして「高齢になっても衰えない飲み込み力を」をつけることへとつながっていくということ。(第2章「のどを鍛えれば、寿命は10年のびる!」より)

では、日常でどんなことに気をつければいいのでしょうか。

①意識をもって飲み込む

普段意識しないからこそ、意識して飲み込むこと。無意識で行うことは、間違えることが多いいので、意識するだけでも、かなり防げるとのことです。

②飲み込んだ後は息を吐き出す

ビールを飲んだ後の「プハーッ」と息を吐きますね。飲み込んだ後は、息を吐き出すのがいい。反対に、飲み込んだ直後に息を吸ってしまうと、食べ物を肺に吸い込んでしまいやすいそうです。

③「しっかり声を出す人」は飲み込み力も高い

発声は、飲み込み力とほぼ同じ器官を使っており、大きな声や高い声を出すと、のどの筋肉が効果的に刺激されるので、「普段からしっかり声を出す習慣」が、飲み込み力を鍛えることへとつながるそうです。

「普段からしっかり声を出す習慣」をつけるために、著者がすすめるのは次の3つ。

「カラオケ」「おしゃべり」「笑い」

意識していつもより人と「おしゃべり」する。お笑い番組などを観て、意識して声を出して「笑う」ようにする。というのは比較的楽しく日常に取り込みやすいトレーニングです。

では、「カラオケ」では、何を意識して取り組めばいいのでしょうか。



■楽しんでのどを鍛える「カラオケ」のすすめ


本書の第3章「飲み込み力がアップする8つの「のど体操」」には、具体的なのどを鍛える方法や、呼吸のトレーニング方法などが端的に分かりやすく掲載されています。

中でも特に気になったのが、発声トレーニングの一つ「ハイトーンボイス・カラオケ」です。

そもそも著者が「カラオケ」をすすめる理由は、以下です。

・カラオケは飲み込み力をキープしていくには非常に有効な手段。

・しっかり声を出して歌っていると、呼吸器が鍛えられ、のどをたいへん効率よく鍛えられることができる。

・「カラオケ」を楽しんで、歌がうまくなり、のども鍛えられる。

そして、「カラオケ」で「飲み込み力トレーニング効果」を引き出すコツは、

「高い声を出して歌うこと」

だそうです。

なぜなら、

・高い声を出すとのど仏が上がる。キーの高い曲を選曲して、のど仏をしっかり上げ、さかんに上下させるとのどが鍛えられる。

・普段から積極的にハイトーンボイスで歌っていれば、のど仏があがり、のどの筋力がついて誤嚥のリスクが低下し、飲み込み力をキープする可能性が高まる。

では、具体的に「ハイトーンボイス・カラオケ」とはどんなものでしょうか?



■高い声を出すのにおすすめの曲


本書には、「高い声を出すのにおすすめの曲」がリストアップされています。

<上級者向き>
『大都会』クリスタルキング
『もののけ姫』米良美一
『Forever Love』X JAPAN
『さくら』森山直太朗

<中級者向き>
『Automatic』宇多田ヒカル
『たしかなこと』小田和正
『CAN YOU CELEBRATE?』
『愛のメモリー』松崎しげる

<初心者向き>
『少年時代』井上陽水
『春よ、来い』松任谷由実
『津軽海峡・冬景色』石川さゆり
『世界に一つだけの花』SMAP

『大都会』といえば、「あーあーーーーー!!!」という冒頭ですね。確かに高いですし、のどがかなり鍛えられそうですね。


でもちょっと難しそう・・と感じるのは私だけでしょうか?


■声を出す習慣「詩吟」のすすめ


本書には、この他にも、誤嚥を防ぐ「食べる」ルール九か条、のどのお悩み相談など、非常にわかりやすく、読んですぐ取り組めるようなものばかりが掲載されています。

特に、楽しんで誤嚥を予防できる「カラオケ」もぜひ取り組んでみたいところですが、カラオケが苦手な方には少々ハードルが高いかもしれません。


そこで、私のおすすめは「詩吟」です。その理由は、次の三つです。


①伴奏がないから音痴でも大丈夫。

②自分に合ったキーで高い声を出すから無理がない。

③一曲が短い(俳句や和歌など)から繰り返し練習できる。


また、詩吟では、伴奏もマイクも要りませんので、カラオケボックスに行く必要がありません。
道具もいらず、身ひとつでできるのでお手軽です。家で大声が出せない場合は、車の中や公園がおすすめです。


では、詩吟で本当にのどは鍛えられるのでしょうか?


ある方の例をご紹介します。


70代のTさんは、言葉が聞き取りにくいと家族に言われ、口まわりの衰えを感じ、誤嚥を防ぐためにも、大声を出す習慣として「詩吟」を習い始めました。

Tさんは、小学生から中学生の変声期で歌が歌いづらくなって以来、自分は音痴だと感じ、歌嫌いになっていました。サラリーマン時代も、カラオケに誘われると「勘弁してくれ」と逃げてきたそうです。

しかし、年を重ねて声が出にくくなるにつれ、声を出さなくてはと思い、大声を出す壷を買ったり、口まわりを鍛える道具を買ってみたりしたものの、飽きっぽいTさんにとって続けることは困難でした。

ところが、詩吟では、もともと趣味だった和歌を題材に大きな声を出していきます。

気がつくと、飽きっぽいTさんは詩吟を続けていて自分でも驚きました。

そして、

「カラオケ嫌いの人間でも楽しめる」
「詩吟って難しくないんだ」
「ただ繰り返し大声を出せばいい」

と感じ始めました。

詩吟を始めてしばらく経ったある日。Tさんは、夜中、咳き込んではなかなか切れなかった痰が、咳一発で切れるようになったそうです。
 

このように、詩吟で、大声を出す習慣を身につけることでも、のどが鍛えられ、誤嚥を防ぐことができることにつながるのです。


■まずは、大声を出してみる


さて、カラオケよりもハードルが低く、かつ、楽しくのどを鍛えられる詩吟ですが、

それ以前に、そもそも、

「大声を出すことに抵抗がある」
「どうやって出せばいいかわからない」
「大声を出そうとすると喉が痛くなる」

という方も多いのではないでしょうか。

そんな方におすすめなのが、『大声のすすめ。』です。

もともと「声が小さい」、「声を出すのが苦手」と感じている方に向けて、誰でもかんたんにできる「大声を出す方法」をイラストたくさん交えてご紹介しています。

大声を出すメリットは次の三つです。


①健康になる

②緊張がとれる

③自信がつく


大声は誤嚥を防いで健康を維持するだけでなく、深い呼吸でリラックスし、緊張がとれ、気持ちよく楽に声が出ることによって、コミュニケーションに自信がついてきます。


のどを鍛えるのに年齢は関係ありません!何歳からでも強くなります。


ぜひ、大声を出して、自信と健康、そしてコミュニケーション力をアップさせ、楽しい人生を送りましょう!